読書感想文

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耳がきこえないママときこえるムスメのおはなし。を読んだ感想

 

耳がきこえないママときこえるムスメのおはなし

著者 うささ

 

 

 

 

私たちは誰だって自分の世界を通してしか、世界を見ることができない。耳が聞こえない世界とはどんなものだろう。と、想像してみることはできても、私の耳は聞こえている。音のある世界と、音のない世界。

 

障がいを抱えた子に対する親の思いが書き記された本やエッセイ集,SNSやブログなどを目にすることは多い。だが、その反対は数少ない。そんな興味本位から本書を手に取った。

 

ほのぼのとした子との日常生活が綴られていく中で起こる喜びや悲しみ、そして不安のそのほとんどが、耳の聞こえる私でさえ懐かしいと感じる小さな子供に対する愛情のそれであって、新米ママに対するエールを送りたいという温かな気持ちになる。聞こえる世界と聞こえない世界は、それほど大きく離れてはいない。しかしながらこの感覚は、音の情報量の値を知っている聞こえている側の意見に過ぎないことを思い出させてくれる。どんぐりの家という漫画に登場する耳の聞こえない少年のエピソードを思い出す。学校からの帰宅途中、雪が降ってきた。少年の母親は自宅で家事をしていたので、外の雪には気が付かない。少年はお母さんが雪に気が付いていなかったことが不安になり、やがて怒り、悲しみに変わる。【雪はしんしんと降るのに、なぜ耳の聞こえるお母さんは気が付かないんだ】という不安、怒り、悲しみだ。しとしと降る雨、そよそよ吹く風。ギラギラ降り注ぐ太陽。

 

音のある世界と、音のない世界。それぞれが存在していることを知ることの大切さを柔らかく感じることができた。