読書感想文

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花びらとその他の不穏な物語を読んでの感想

花びらとその他の不穏な物語

著者 グアダルーペ・ネッテル 

訳 宇野和美

 

 

 

特異的であるが故に普遍的であるものというのは面白い。という表現を思い出す一冊。一方通行の愛が大きければ大きいほど、不穏な物語になるということを再確認することができた。仮に【良い愛】と【悪い愛】があるとすれば、この物語にある愛は【悪い愛】に分類することができて、悪いが故に美しくもあるのだけれど、あり得ないことだが同時に美しさというものが微塵もなくって、それがめちゃめちゃに気持ちが悪い。どいつもこいつも、一方的な自己愛を相手にぶつけている。

 

そしてこの気持ち悪さは始まりから終わりまで続く種類のものではなく、ある時ある瞬間から良い愛が悪い愛へと不安定に変化してしまうのだから面白い。その変化に気が付くこともあれば、気が付かないこともあるというわけだ。

 

短編集になっているが、どの話も不安定に変化していく。何も起こらないようで大きなできごとが起こり、大きな出来事のようで何も起こりはしない。【盆栽】では東京が舞台になっており、特に特異性を感じる話になっている。ぞわぞわと気味が悪くって嫌いなのにも関わらず、読み進めてしまうのだな、コレが。ラテンアメリカ文学に登場する日本人というのはいつも必ずと言っていいほどフェティシズムに溺れているのはなぜだろう。不安定さによる心の揺れが、読み終わった後に大きくなる一冊。